咳やくしゃみ、運動など、腹圧が上がる動作により、意図しない尿漏れが生じる状態です。
主な特徴
腹圧性尿失禁では、以下のような状況で尿が漏れます:
- 咳やくしゃみ:急激な腹圧上昇時に尿が漏れる
- 笑う、鼻をかむ:軽い腹圧上昇でも漏れることがある
- 運動時:走る、ジャンプ、エアロビクス、階段の上り下り
- 重いものを持つ:物を持ち上げる際の腹圧上昇
- 立ち上がる動作:椅子から立ち上がる時に漏れることもある
- トランポリン、跳び縄:衝撃を伴う運動
漏れの量: 数滴から中程度(パッドが必要になることもある)
原因
腹圧性尿失禁を引き起こす主な原因:
- 骨盤底筋群の弱化:妊娠・出産による損傷、加齢による筋力低下、慢性的な腹圧上昇(肥満、慢性咳)
- 尿道括約筋の機能低下:加齢、ホルモン低下(閉経後の女性)
- 膀胱頸部の下垂:骨盤底筋の支持力が低下し、膀胱頸部の位置が低くなる
- 妊娠・出産:膀胱頸部周囲の組織損傷、骨盤底筋の過度な拡張
- 肥満:腹圧の増加により尿道括約筋に負荷がかかる
- 慢性咳:長期の喫煙、COPD(慢性閉塞性肺疾患)
- 閉経後のホルモン低下:尿道粘膜のエストロゲン減少による機能低下
- 手術や放射線治療:骨盤内手術による神経・筋肉損傷
メカニズム
腹圧性尿失禁では、以下のメカニズムで尿漏れが生じます:
- 骨盤底筋の支持力不足:膀胱頸部と尿道が下垂し、腹圧に対して十分に支持できない
- 尿道括約筋の圧力低下:腹圧の上昇が、尿道内圧よりも膀胱内圧の方が高くなる
- 膀胱頸部の動的変位:腹圧により膀胱頸部が移動し、尿道が開く
治療法
腹圧性尿失禁の主な治療方法:
保存的治療
- 骨盤底筋運動(ケーゲル運動):定期的な骨盤底筋トレーニングにより筋力を回復させる。3〜6ヶ月の継続で改善率は約70%
- 生活習慣の改善:体重減少、喫煙の中止、慢性咳の治療
- 膀胱訓練:定期的なトイレ訪問、水分管理
- 外部デバイス:尿道スリング、ペッサリー(膣内に装着する器具)
薬物療法
- アドレナリン受容体作動薬:尿道括約筋の収縮力を増加させる(効果は限定的)
外科的治療
- 尿道スリング手術:尿道の下に支持組織(メッシュやテープ)を置き、膀胱頸部を支える(成功率90%以上)
- 膀胱頸部懸垂手術:膀胱頸部を外科的に吊り上げる(現在はあまり行われない)
- コラーゲン注入:尿道周囲にコラーゲンを注入し、尿道の圧力を高める
女性に多い理由
腹圧性尿失禁は女性に圧倒的に多く(男性の約10倍)、特に以下の理由があります:
- 妊娠・出産:骨盤底筋と周囲組織への大きなストレス
- 解剖学的違い:女性の尿道は男性より短く、括約筋機能も異なる
- 閉経後のホルモン低下:エストロゲン減少による尿道組織の萎縮
予防・生活上の工夫
- 日常的な骨盤底筋運動
- 適正体重の維持
- 喫煙の中止
- 重いものを持つ際は腹圧を上げすぎない
- 吸水性パッド、尿漏れパンツの使用
腹圧性尿失禁は多くの女性が経験する状態ですが、適切な治療により改善が期待できます。
