泌尿器科宮尾クリニック 室蘭市中島町26番17号☎(0143)42-3800

睡眠中に無意識に排尿してしまい、尿漏れが生じる状態です。

主な特徴

夜尿症では、以下のような特徴が見られます:

  • 睡眠中の無意識の排尿:目覚めないまま尿が漏れる
  • 夜間のみの症状:昼間は正常な排尿機能を持つ
  • 発症年齢による分類
    • 一次性夜尿症:生まれた後、ずっとおねしょが続いている
    • 二次性夜尿症:一度、夜尿が治まった後に再び始まる

年齢による定義

夜尿症の定義は年齢により異なります:

  • 小児(5歳以上):週1回以上の夜間排尿が3ヶ月以上続く状態を夜尿症と診断
  • 成人:夜間睡眠中の尿漏れが継続する状態

成人では夜尿症よりも**夜間頻尿(夜間に何度もトイレに目覚める)**との区別が重要です。

原因

夜尿症の主な原因:

小児の一次性夜尿症

  • 脳の発達未熟:睡眠中の脳からの排尿抑制信号の発達が遅れている
  • 夜間の抗利尿ホルモン(ADH)分泌異常:夜間に十分なADHが分泌されず、尿量が増加
  • 膀胱容量の小ささ:膀胱の機能的容量が年齢の割に小さい
  • 睡眠の深さ:深い睡眠により、排尿の信号に目覚めにくい
  • 遺伝的素因:親が夜尿症だった場合、子どもが夜尿症になる確率が高い(約77%)

小児の二次性夜尿症

  • 心理的ストレス:引っ越し、新しい学校への入学、親の離婚、兄弟姉妹の誕生など
  • 感染症:尿路感染症、膀胱炎
  • 睡眠障害:睡眠時無呼吸症候群(OSAS)
  • 便秘:直腸内の便が膀胱を圧迫
  • 発達障害:ADHD(注意欠如多動性障害)

成人の夜尿症

  • 夜間尿量の増加:夜間の抗利尿ホルモン分泌低下、加齢、利尿薬の使用
  • 膀胱容量の低下:加齢、前立腺肥大症、膀胱炎
  • 睡眠障害:睡眠時無呼吸症候群、不眠症
  • 神経疾患:糖尿病、脊髄損傷、パーキンソン病
  • 薬剤副作用:利尿薬、向精神薬
  • 過度なアルコール摂取:利尿作用により夜間尿量が増加

メカニズム

夜尿症の発生メカニズムは、年齢や原因によって異なります:

小児の場合

  • 睡眠中の膀胱収縮:睡眠深度が深いため、尿意の信号が脳に伝わらず、膀胱が自動的に収縮する
  • ADH分泌不足:夜間のADH分泌が十分でないため、尿の濃縮が進まず、尿量が多くなる
  • 脳の成熟遅延:排尿反射を抑制する脳領域の発達が不十分

成人の場合

  • 夜間尿量の増加:ADH分泌低下、水分摂取過多、心不全による体液貯留
  • 膀胱容量の減少:過活動膀胱、膀胱容量の加齢に伴う低下
  • 睡眠覚醒の障害:排尿信号に対する反応性低下

治療法

夜尿症の治療方法は、年齢と原因により異なります:

小児の夜尿症

生活習慣の改善

  • 夜間の水分制限:夜間(就寝2時間前以降)の水分・液体摂取を制限
  • 就寝前の排尿:就寝前に必ずトイレに行く
  • 規則正しい睡眠:十分な睡眠時間の確保
  • 昼間の排尿習慣:定期的なトイレ訪問、昼間の十分な水分摂取

行動療法

  • アラーム療法:夜尿を感知するセンサーが音・振動で子どもを覚醒させ、排尿反射と覚醒の関連付けを学習させる(成功率約65~70%)
  • 排尿日誌:夜尿のパターンを記録し、改善を視覚化

薬物療法

  • デスモプレシン(DDAVP):夜間の抗利尿ホルモン製剤。鼻腔スプレーや内服により、夜間尿量を減少させる(成功率約50~70%)
  • 三環系抗うつ薬(イミプラミン):膀胱容量を増加させ、睡眠深度を低下させる(効果は限定的)

成人の夜尿症

原因疾患の治療

  • 前立腺肥大症:α1遮断薬、5α還元酵素阻害薬
  • 睡眠時無呼吸症候群:CPAP(持続的気道陽圧呼吸)装置の使用
  • 尿路感染症:抗生物質治療

生活習慣の改善

  • 夜間水分制限:特に就寝前のアルコール、カフェイン摂取の制限
  • 利尿薬の見直し:夕方以降の利尿薬使用の回避
  • 体位変換:右側臥位による腎血流の減少

薬物療法

  • デスモプレシン:夜間尿量を減少させる
  • 抗コリン薬:膀胱容量を増加させる
  • α1遮断薬:前立腺肥大症がある場合

小児夜尿症の自然経過

ほとんどの小児夜尿症は年齢とともに自然に治癒するため、焦らず長期的な観点で対応することが重要です。

心理社会的影響

特に小児では、夜尿症により以下の心理的影響が生じることがあります:

  • 自尊心の低下
  • 社会活動の制限(泊まりがけの行事への参加回避など)
  • 親子関係のストレス

心理的なサポートも治療の重要な部分です。親は子どもを責めず、改善に向けた支援的な態度を心がけることが大切です。

この診断は医療機関を受診される際の参考にしていただくもので、医師の診察に代わるものではありません。症状に気になる点がある方は早めに医療機関にご相談ください。